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スタートアップ・ユースキャンプ ワークショップ

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活動レポート

TEENS meetup 2024.07.24

【開催レポート】TEENS meetup 2024 -未来のスタートアップ- (前編) 

2024年7月7日、ナゴヤイノベーターズガレージにて「スタートアップ・ユースキャンプ」の事業説明会を兼ねた講演会イベント「TEENS meetup 2024 -未来のスタートアップ-」を開催しました。

本イベントでは、株式会社スペースマーケット 代表取締役社長の重松大輔さん、株式会社ALE 代表取締役・CEOの岡島礼奈さん、株式会社Arts Japan 代表取締役・CEOの久世琢真さんの起業家3 名をゲストに迎え、起業のきっかけやリアルな苦労と楽しさを語っていただきました。

登壇者の自己紹介 

■株式会社Arts Japan 代表取締役/CEO 久世琢真さん

プログラミングスクールなどの教育事業や、社内の教育マニュアルを構築するためのワークシートの作成や映像講義などを、プログラミングの技術がない方でも簡単に開発することができる教育現場DXシステム「Revot」を提供されています。現在特に「Revot」の需要が高まっているのは従業員マニュアルを多くの店舗で効率的に管理したい飲食業様で活用が進んでいます。教える人と教わる人のインフラとなるサービスです。

元々プロサッカー選手を目指していた久世さん。高校生の同期や先輩には現日本代表選手もいる環境でサッカー漬けの毎日を過ごしていましたが怪我の影響もあり19歳で引退します。引退後、次の道を模索される中で父親の影響で幼少期からものづくりが好きな事が今の会社を創業するひとつのきっかけになったといいます。

サッカーを追及する中で睡眠や栄養学など上達に必要なあらゆる事を自ら学んだ経験から「ひとつのことに夢中になって突き詰める」大事さを高校生達に投げかけるとともに、「大切なことは全て小学校の先生に教わっている」という久世さんが今でも大事にしているエピソードをお話しいただきました。

 
■株式会社ALE 代表取締役/CEO 岡島礼奈さん

鳥取県出身の岡島さんは東京大学で天文学の博士号を取得後、金融機関のゴールドマンサックスに勤務されましたがリーマンショックをきっかけに退職、その後に宇宙スタートアップの株式会社ALEを創業されます。

株式会社ALEは、1cm程度の流れ星の粒を数百個搭載した人工衛星の開発を行い、宇宙空間に打ち上げた人工衛星から流れ星の粒を放出して大気圏に衝突させ、地球から空を見上げると流れ星に見える「SKY CANVAS」事業を行なっています。観光地活性化としての利用やハリウッド映画のプロモーション活用など大規模なものから、父から娘へのプレゼントなどパーソナルなものまで幅広いニーズがあります。

岡島さんは自然豊かで星が綺麗に見える鳥取県の鳥取県西高校の学生時代を過ごしていた事が宇宙に興味を持つきっかけとなり、そこから宇宙論や物理学の観点で宇宙への関心を深めたことが創業の原体験であるとお話しいただきました。


■株式会社スペースマーケット 代表取締役社長 重松大輔さん

新卒でNTT東日本に就職、30歳で友人が起業した当時未上場の株式会社フォトクリエイトに参画後、上場までご経験されます。その後、スペースを借りたい人と貸したい人をマッチングするプラットフォームサービスを提供する株式会社スペースマーケットを2014年に創業、スペースマーケットではお城や神社に無人島などユニークな場所も借りられます。

高校時代はラグビー部の主将を経験、早稲田大学入学後はラグビーとは違う様々な経験にチャレンジ(TV番組のADのアルバイトでは幾度もご自身もTV出演や神楽坂でのBARテンダーでは著名な作家に出会うなど)、面白そうな事には首を突っ込む学年時代を過ごされていました。

学生時代の多くの友人たちが起業して会社を上場した話を何度も聞くうちに「自分も起業できるのでは?」と幸せな勘違いをしたことが起業するきっかけにもなったとお話してくれました。



第二部 パネルトーク 

第二部では本プロジェクトの統括ディレクターである飯田一弘(ミテモ株式会社 取締役)がモデレーターを務め、重松さん、岡島さん、久世さんとパネルトークをおこないました。 

飯田:起業という選択肢が人生の中で現れたのはいつからですか? 

重松さん:小規模な家族経営の不動産会社で大学生の時にアルバイトをしていました。大変儲かっている会社で社長はバブルの頃にアメリカ中の土地を大量購入していた不動産会社でNo.2の実績があり、彼に起業の楽しさを色々と教えてもらいました。社長が行く店や付き合う人は全然違うし、今まで自分が出会った人達と物事の見方も全く違うことに気が付きました。創業者は圧倒的に他と全然違うと感じ起業に関心を持った原体験ですね。

岡島さん:鳥取には起業家はほとんどいない環境でしたので、私は大学に入学してから起業家という存在を知りました。大学生の時にプログラミングのバイトを自分で引き受けていた時期があり、私が仕事を取ってきてプログラミングできる友人たちに依頼する事をやっていました。その仕事が順調な事もあって仲間や取引先も増え、その流れで法人格を取得する必要が生まれたため起業をしたのが最初のきっかけです。 ※岡島さんは株式会社ALEの前にふたつ会社を創業されています。

久世さん:19歳までサッカー選手を目指しており、Jリーグでの練習参加なども経験しましたが、怪我がきっかけで引退しました。監督から指導者の道を勧められましたが、サッカー選手として成功したかったのでオファーは断り、世界で戦える違う道を探しました。父親が小規模ながら中古車の販売修理の自営業を営んでおり、商売している姿は小さい頃から見ていてものづくりは身近に感じていました。ある時、本屋でたまたま読んだ雑誌に前澤友作さんの記事で起業家という存在を知り、ものづくりの会社を起業しようと思いました。

飯田:一度、会社に就職してから起業された重松さん岡島さんのお二人に質問です。会社員の時とどんな違いがあるとか?実際に起業して感じたことなど聞かせてください。

重松さん:起業前の株式会社フォトクリエイトでは社長室のポジションで経営に携わっていましたが、会社員として経営に関わるのと自分で実際に経営する事の違いの大きさにびっくりしましたね。起業してからも事業が停滞するなど会社員時代に経験した問題などいくつも発生しますが、既に経験していたことは自分の会社でもうまく対処することができました。

 

岡島さん:事業をすると色々な人が応援をしてくれます。そのためこれは絶対にやめられない思いと自分がやりたい事なのでやり遂げようと日々向き合っています。私は2018年にチームビルディングがうまくいかず一度チームが崩壊をした経験があります。その後にミッション・ビジョン・バリューを明文化して改めて人を集めました。ビジネスでは外部との問題は大変な事でも一晩寝たら回復しますけど、会社内部の問題はなかなか回復しないと感じます。 


飯田:起業して大変な事が多々ある中、良かった事や報われた事もぜひ高校生の皆さんへ教えていただけますか?

重松さん:起業して良かった事は仲間がどんどん増えていくところですね。それが社員だけでなく取引先、またスペースのオーナーや借りる人も含めてですね。例えば地方出張でスナック店主との会話で「私もスペースマーケット使った事がある」と言われるなど、自分が作ったサービス利用者の存在を日本中で感じられるのはとても嬉しいです。みんなの生活を自分達のサービスで良くしたいという思いでやっていますからね。

岡島さん:宇宙ビジネスは10年前と比較してだいぶ風向きが変わってきているのが面白くて、この業界の盛り上がりに自分達の存在が1%くらいは寄与できているのかなと感じられるのは楽しいなと。自分の行動があった時となかった時の差分がたぶん世界にはあるはず。その差分を創り出せている事が面白くてやりがいがあると感じています。



久世さん:この前、お客さんから「本当にRevot作ってくれてありがとうございます。」というメッセージとともに高級なコーヒー豆が弊社のオフィスに届いて嬉しいかったですね。良いプロダクトを作れた自信は凄くあるので、自分たちの事業を通して世界を前に進めていくところに好奇心があります。
世界中の教育現場にRevotが導入されている光景を自分の中で考えています。サービスを使用されている方を見た時や感謝の言葉を聞いた時は自分の中でグッとくるものがあります。



飯田:オンラインからいただいた質問を取り上げたいと思います。「失敗を恐れて挑戦するのが怖いのですが、お三方はどうやって失敗を恐れずに挑戦をしてきましたか?」という事ですが、失敗に対してどう向き合っているかを教えてください。



重松さん:失敗は成功の母と言われているので、しっかりロジックや仮設を立てて実行した上での失敗なら、なぜうまくいかなかったのか?しっかり振り返れば次のアクションに活かせると思います。一番ダメなのは何もしない事、それだと何もわからないし一歩も進んでいない。失敗しながらもどんどん改良して良いものを作り続ける事で正解にたどり着く。それを物凄いスピードで想いをもってアクションし続けるのが大事。これは起業だけではなくどんなことでも一緒だと思います。スポーツでも同じですし、ゲームもかな?またキャリアという考え方からも起業して前向きに色々試した上で失敗した人は評価されるので転職もできるし、ヘッドハンティングされたりするので、何もやっていない人が一番ダメです。



飯田:思い込みというか偏見ではないけど、失敗すると人生終わるみたいな感じってありますよね?


重松さん:それ、昔の日本ですよね。私は就職氷河期世代なので大企業に入れなかったら人生が終わるみたいな社会の空気が当時ありました。新卒で会社に就職できなかったら一生非正規雇用で人生終わるみたいな時代でしたが、今は人手不足で売り手市場ですし、なんなら若い人の方が給料が良い会社もあるので、色々な事にチャレンジしてその経験をアピールした方が良いと思います。




飯田:おふたりはいかがですか?



岡島:私は結構失敗している方ですが、私は失敗よりも他の人に事業で先を越される方が怖いと感じています。

例えば、宇宙業界の方が好きなイーロン・マスクという人は凄くて、彼が経営する宇宙ベンチャー企業「スペースX」が開発したロケットは宇宙に打ち上げた後、地上に戻ってきて垂直着陸します。それを実現するため宇宙開発にアジャイル(小さく何度もテストしながら開発を進める)を持ち込むという凄い事をやっています。

一般的には宇宙開発は失敗が許さないので100%に近づけるため長い時間かけて準備します。スペースXでは成功確率50%程度なら失敗しても良いからチャレンジして、仮に失敗してもそこで得られたデータを次の学びに活かせば良いという考え方です。

日本では2023年ロケットが一度も打ちあがっていません。その間にスペースXは何十基も打ち上げていて、今では毎週ロケットを打ち上げている。なので、どんどんチャレンジしないとダメだなと思いました。

久世さん:自分が大事にしている事を話します。有名な野球選手の打率って皆さんわかりますか?約3割です。めちゃくちゃ努力してマウンドに立っている選手達も10回球が飛んできて3回球が当たるくらいです。ただ野球選手とビジネスの違いについて野球選手は打てる球数が限られていますが、ビジネスでは打てる球はいくらでも増やせます。

また直近のエピソードとして知り合いの起業家が事業を撤退したのですが、すぐに別のスタートアップから声をかけられています。毎日全力でチャレンジした人間はみんな喉から手が出るほど欲しい人材なので、万が一、皆さんが今後起業して、思い描いていた通りにいかなくて、もう一回やり直そうと思ったとしても、その努力や挑戦を称賛して声をかけてくれる仲間は多くいるので、どんどん挑戦をしていいと思います。



飯田:たくさん質問がきていて、全部は拾えないのですが、いくつかピックアップして質問します。今、高校生だったら何に挑戦をしたいですか?学歴は起業にとって武器になりますか?高校生にとって関心が高い質問ですね。このあたりいかがでしょうか?




重松さん:最近は高校生でもスタートアップで手伝いしているし、高校生や大学生で起業する人もいるので早くやる事は良いと思っています。また海外の大学に挑戦する時にアピールできる経験にもなるので、いやらしい思いで起業する事は悪くないと思うし、挑戦する人が世の中に増える事は大事と思います。

学歴の話でいくとエンジニアは関係ないですね、どれだけ自分が関わったプロジェクトで結果を出したなど実績重視かなと。かたやコンサルなどの仕事に就く場合は有名大学の学歴は営業しやすい側面あると思います。

もし自分が高校時代に戻れるなら海外に挑戦したいですね。海外への経験は1年でも2年でも早く経験した方がいいと思います。



岡島さん:高校生に戻れるなら私はブレインテックとか生物系のバイオ関係の勉強をしたいですね。例えばディープテックだけに特化するならば、大学の博士課程を修了した方が良いと思います。私は海外の投資家の出資を受けていて、海外で150人程度の起業家が集まる会の話ですが、参加する起業家は博士号取得者が多く、博士号ない方は参加お断りみたいな学歴が必要な業界もあります。ただし、学歴良いからビジネスが成功するかは全然違う話なので、そこはこだわらず自分のスタイルを貫けば良いと思います。



久世さん:僕は高校生に戻れるならまたサッカーでプロを目指します。自分が大切にしている価値観があって、選んだ道を正解にするという言葉を自分はずっと言い続けていて、どんな選択肢を選んでも、それが正解という道はないと思っています。自分が決めた道ならばそこに向かって全力で走りきるのが大事と思っています。大学に行こうが高校を中退しようが僕は何でもいいのではないかと思います。

確か孫正義さん(ソフトバンクグループ株式会社 代表取締役 会長兼社長執行役員)は高校を中退しています。孫さんは目の前にある山を乗り越え続けた結果、今の場所に辿り着いていると思っています。どんな選択肢でも決めた事をやりきる事が大事だと思うので、選択に正解みたいなものはないかなと思っています。




 3人の登壇者には会場やオンラインからの質問にもできるだけ答える形で起業に関するリアルなお話をしていただきました。


「気軽に起業について語り合える場」を持ち、「疑似的な起業体験ができる」スタートアップ・ユースキャンプ四年目の夏が7月20日よりスタートしています。四期生たちの活動はこちらで定期的にアップしていきます。高校生たちの成長にご期待ください

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